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別居期間が7年でも離婚請求を認めなかった裁判例【東京高裁平30.12.5】(2)

別居期間が7年におよぶ場合であっても、離婚請求者(夫)に婚姻関係維持の努力や別居中の多方配偶者への配慮を怠った事情があるときには、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえず、信義誠実の原則に照らしても離婚請求が許されないとした事例(2)
【東京高裁平30(ネ)3466号、平成30・12・5民11部判決、取消・請求棄却】(判例時報No.2427 2020年2月1日号)

【原審判決】東京家裁平30・6・20(夫Xの離婚請求を認めた)

事案の概要は前記事へ。

(夫が職場への通勤の便宜を理由に単身赴任を開始した後1カ月で突然離婚を求め、その後別居期間が7年に及んだ事案に関する裁判例)

原審である東京家裁(平30・6・20)は、

「夫Xが主張する妻Yの所作や発言等については、それ自体、婚姻関係を破綻させるだけの決定的な出来事であるとまではいえないが、妻Yが、亡Aとの養子縁組、生命保険の受取人変更、原告実家の売却代金の受領など、夫Xにとって身分関係上も財産関係上も重要な事項について夫Xの理解を求めずに行ったことは、原告の被告に対する信頼を失わせるのに十分な出来事であるというべきである。

XがYからの直接の連絡を拒む姿勢を示しているにも関わらず、Xの居住先を訪れるなどした行為はYにとっていかにXの行動が不当であったとしても、原告の心情や立場を理解しないものといわざるを得ず、これによってXの離婚の意思が強固になったとしても、致し方ないというべきである。

そして、XとYとの別居期間は、当審の口頭弁論終結時までに6年10か月が経過していること、現在もXの離婚の意思は強固であること、Yは、少なくとも前件訴訟において、Xが婚姻を継続できないと考える原因について知り得たのであるから、一旦はXの訴えに耳を傾けて歩み寄る姿勢を示すことも可能であったと思われるのに、Xが離婚訴訟を提起する理由が分からないとの態度を変えていないことに照らすと、いくらYに復縁の意思があるといっても、婚姻関係は破綻し、その修復は極めて困難であるといわざるを得ないから、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる。

Xが有責配偶者に該当し、Xの離婚請求が許されないか否かについては、確かに、Xが、離婚の意思を秘して別居を開始し、亡Aの世話を任せきりにした点については、家族に対する責任を充分に果たしていないという面は否定できないが、日常の些細な言動が積み重なって忌避感が醸造され、これが同居困難なまでに高まることは十分あり得るのであって、XがYに対する忌避感を有するに至ったことについてXに非があるとまでは評価できないこと、YはXのこのような心情を一旦は受け止めるという姿勢を示していないことに照らすと、Xが婚姻継続の意思を失ったことについて、Xを有責配偶者であるということはできない。

よって、Xの離婚請求が信義則上許されないということはできない。」

とし、Xの離婚請求を認めました(その後東京高裁で妻が逆転勝訴し離婚は認められませんでした)。

事実経過は同じでも、第1審は高裁とは全く逆の評価をしていたわけですから、裁判官によっても判断が分かれる微妙な事案だったのかもしれません。

しかし、この第1審は、夫が離婚請求をし始めた時点では離婚理由はなかったと認めつつも、その後夫が家族との接触を拒絶し将来への不安から夫の父が妻や孫への贈与等を行ったことをもって、夫が妻への信頼を失った事由となったとしてしまっている点が不可解です。
(このような行為が離婚理由の一事由になるのであれば、妻や夫の父は夫が一方的に離婚請求をして連絡を拒絶した後どのように行動するのが正解だったというのでしょうか)

この点、東京高裁は原審の東京家裁とは全く逆の判断をして、妻が逆転勝訴しています。

次々記事:別居期間7年でも離婚請求を認めなかった裁判例【東京高裁平30.12.5】(3)東京高裁の逆転判決の内容へ

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