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別居期間7年でも離婚請求を認めなかった裁判例【東京高裁平30.12.5】(1)

別居期間が7年におよぶ場合であっても、離婚請求者(夫)に婚姻関係維持の努力や別居中の多方配偶者への配慮を怠った事情があるときには、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえず、信義誠実の原則に照らしても離婚請求が許されないとした事例(1)
東京高裁平30(ネ)3466号、平成30・12・5民11部判決、取消・請求棄却】(判例時報No.2427 2020年2月1日号)

よく離婚案件のご相談において、「別居期間が何年を超えれば離婚できますか」
などと質問を受けることがあります。

たしかに別居期間の長さは、「婚姻を継続し難い重大な事由」の重要な判断要素となります。

しかし、別居期間が長いというだけで離婚が認められるとは限りません。

実際この事案(別居期間が7年)においては、第1審の東京家裁は夫からの離婚請求を認めましたが、控訴審の東京高裁では離婚請求を認めませんでした。

東京高裁平成30年12月5日判決は、夫が一方的に別居して離婚請求をし、婚姻関係維持の努力をせず、話し合いをまともにしなかったこと、その間、妻は夫の父や子らを一人で世話をしていたこと、妻は専業主婦で病気があり就労が困難であること等を考慮し、

別居期間が7年に及んでいても、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとは言えない」「夫からの離婚請求は信義誠実の原則にも反していて許されない」と判断しました。

また、同判決において東京高裁は、「別居期間が長期になればそれだけで離婚が認められるという極端な破綻主義的見解を採用しない」と明言しています。

別居期間さえ長ければ、特段離婚理由がなくても婚姻を継続し難い重大な事由があり離婚が可能であるという破綻主義的風潮に対し注意喚起する内容でもあると言えます。

高等裁判所がこのような判断を示したという点で意義があると思いますので詳しく紹介したいと思います。

【事実の経過】
事実経過について、東京高裁は以下のとおり認定しました(概要)。

1993年  夫Xと妻Yは婚姻し、その後長女(B)、二女(C)をもうけた。
2011年までの17年間、夫Xは海外赴任をした。
その間、5年半ほど、妻Yも同伴赴任した。
また、夫Xの日本帰国時や赴任先で合流して旅行等をして通常の家族と同じ状態にあった。

2009年、夫Xの実父(夫の父A、当時80歳)の日常生活の面倒を妻Yがみることになり、妻Y、子らと夫の父Aは同居を開始した。
夫の父Aは呼吸器障害により酸素マスクの使用、介護ベッドの使用を要する状態であり、身体障害者手帳の交付及び要介護2の認定を受けた。

2010年、夫Xが帰国し、5人での生活となった。
2011年 夫X、妻Y、子ら及び夫の父Aはより広いマンションに転居した。

2011年6月 夫Xは、勤務先がサマータイム制を導入して始業時刻に間に合わないことを理由として、2011年6月から、サマータイム期間中の予定で、勤務先の近隣の賃貸マンションに単身赴任した。

2011年7月 夫Xは、単身赴任して1カ月半程度経過した7月25日、電話で、突然、妻Yに対して、離婚したい旨を告げた。
夫Xから理由についての説明はなかった。

夫Xは、2011年6月以降、当時中3と小3の子2人と、夫Xの父Aの介護を妻Yに任せたまま、離婚の理由や離婚後の子らや実父A、妻Yの生活設計の構想についての説明や話し合いを全くしないで別居生活を7年間以上続けている。

夫の父Aは、自己や孫2人の面倒を一生懸命みてくれる妻Yの将来を気にして、AとYとの養子縁組の同意書名を求めて第1審原告に連絡をとったが、弁護士に電話せよというばかりで直接の連絡を拒絶された。

2011年11月、XはYに対し離婚調停を申し立てたが不調となった。
2012年10月、XはYに対し離婚訴訟を提起したが、全部棄却され、控訴も棄却された。

2013年までに、夫の父Aは、Yや孫2人の将来をますます案じて、Xに連絡を取らないまま、栃木県在住の実家不動産の売却余剰金をYに贈与し、生命保険の保険金受取人を孫ら(BとC)に変更し、AとYの養子縁組の届出をした。

2013年から2016年までの間、夫Xは長崎、東京、宇都宮などに転勤したが、転勤の事実及び転勤先における住所・連絡先をYやAらに知らせなかった。

2014年以降も、妻Y及びXの父Aは、夫Xの代理人弁護士(当時)や勤務先に宛てて、子らの写真や手紙を送付するなどして連絡を取ろうとしていたが、直接の対応は全て拒絶された。

2015年、Yは、健康保険の手続の過程でXの居住先を知り、Aを伴って同所を訪れたが面会できなかった。

2016年 Aは、Yの献身的な介護を受け続けた後死亡した。
Xは葬儀に訪れて、AとYの養子縁組、生命保険金受取人の変更、実家の売却金のYへの贈与の事実を聞かされた。

2017年11月 Xが申し立てた婚姻費用減額調停において、月額20万円の婚姻費用、二女の高校進学費用については別途協議すること等を内容とする調停が成立した。

長女は私立高校を卒業し、二女も同じ私立高校への進学を希望したが、Xは学費の負担を拒絶し、2018年4月から二女は都立高校に進学した。

子らはいずれも、Xが突然別居を開始して離婚を求めて以降、Yが苦労している状況を直接見ており、Aの介護に協力してきたもので、現在でも、両親の離婚に強く反対している。

Yは、不整脈、膝関節痛等により就労が困難で無職である。
Xは2016年度の収入(課長職)は1112万である。

このような事案に関し、原審の東京家裁平成30年6月20日判決は、次のように判示して、夫Xの離婚請求を認めました。(その後東京高裁で妻が逆転勝訴)

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