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法改正〜子の引渡し手続の明確化〜

2019年5月10日に、子の引渡し手続に関する改正法が国会で成立しました。

例えば親権者でない親が子を連れて行ってしまい親権者である親に帰さない場合に、親権者に子を引渡すよう命じる決定が出ていて、それでも親権者でない親が子を引き渡さず、強制執行するしかないようなケースが想定されます。

★これまでの問題点

これまでは、子の引渡しに関する強制執行に関しては明確な法律規定がなかったため、動産に関する強制執行の手続を準用していました。

しかし、引渡し義務者が執行の現場にいる状態で執行を行う必要があるとされていたため、執行官が子のいる現場に出向いても、引渡し義務者が強く抵抗するなどした場合には強制執行が不能になってしまうケースがよくありました。

また、間接強制という、「子を引渡さない場合は、1日につき●●円支払え」という命令を裁判所が出すことにより間接的に子の引渡しを強制する方法もありますが、これも、開き直っていて、差押えも怖くないような義務者には実効性がありませんでした。

★改正のポイント

今回の改正により、義務者が執行の現場にいることは必要なくなりました。

義務者が不在であっても、親権者である親が立ち会えば、裁判所の執行官が強制的に子の引渡しをすることができるようになります。

そのため、執行の現場において、子の引渡しを行うことが格段に容易になると見込まれます。

★子の福祉への配慮

これまでも、子の福祉への配慮はもちろん行われてきましたが、今回、子の年齢や発達の程度などの事情を踏まえて、子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮することが、裁判所と執行官の責務であると明文化されました。

★要件

●間接強制では子の引渡しを実現できない場合

●子に急迫の危険がある場合

などの要件が課せられています。

★施行

公布から一年以内に施行されることになっているので、2020年4月ころ施行される可能性があります。

ですから、今親権や監護権を争っている案件には、この法改正が関連してくる可能性があります。

愛知市民法律事務所
弁護士 榊原真実

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