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特定の相続人に遺産を相続させたくない場合

特定の相続人に遺産を相続させたくない場合

「私が亡くなった場合の相続人(推定相続人)が数人います。
このうちこの相続人にだけは私の遺産を相続させたくありません。
生前に何をしておけばいいですか。」
というご相談を受けることがあります。

この場合に、その相続人が遺留分権利者(配偶者、子、直系尊属)なのか、遺留分権利者でない(きょうだい等)のかによって、方法が異なってきます。

○推定相続人が遺留分権利者でない場合

推定相続人がきょうだいや甥・姪などの場合には、当該相続人には遺留分の権利がありません。

(※「遺留分」とは、亡くなった被相続人の遺志にかかわらず、最低限もらえる遺産の取り分を指します。)

したがって、遺言書によって、「当該相続人には何も相続をさせない」と書いてしまえば、それらの相続人が反論する(具体的には、遺留分の権利を主張する)ことはできません。

したがって、きょうだいや甥・姪などが推定相続人の場合には、遺言書を書いてその者には相続させない/相続分を与えないことを明記することでその者に相続させることを回避できます。

○推定相続人が遺留分権利者である場合

推定相続人が遺留分権利者である場合、すなわち、配偶者、子、または直系尊属である場合には、仮に「○○には一切相続させない」等と遺言書に書いたとしてもその相続人は「遺留分」(被相続人の遺志に関わらず、相続人が最低限相続することができる相続分)を請求することができます。

したがって、その相続人に相続させたくなくても、最低限の遺産はその相続人に相続されてしまうことになります。

遺留分は、配偶者と子の場合は遺産の2分の1が遺留分の対象となります。※

(※この場合、その「遺産の2分の1」を当該相続人が遺留分として全部もらえるわけではない点にご注意下さい。遺留分の計算方法は、遺留分の対象となる遺産を法定相続分で割り、計算します。したがって、例えば配偶者と子2名が相続人の場合には、配偶者は2分の1×2分の1=4分の1の遺留分があり、子1名につき遺留分は2分の1×2分の1×2分の1で8分の1の遺留分があるということになります。)

したがって、その相続人に「一切相続させたくない」場合には、遺言書の準備だけでは不十分で、「推定相続人の廃除」の手続を行っておく必要があります。

ただし、推定相続人の廃除が認められるのは、

①当該相続人から被相続人に対する虐待・重大な侮辱があった場合

②当該相続人に著しい非行があった場合

に限られますから、「○○とはこれまでいろいろあって関係が悪化した」といった程度のことですと、認められない可能性が高いです。

「推定相続人の廃除」は生前に家庭裁判所に審判を申し立てて行う「生前廃除」と、遺言書に廃除の遺志を書いておいて、死後遺言執行人が家庭裁判所に審判を申し立てる「遺言廃除」があります。

通常、推定相続人の廃除の審判手続においては、当該推定相続人に反論する機会が与えられますから、「こっそり廃除しておく」ということはできません。

ですから、生前にそこまでやりづらいということになりますと、遺言廃除ということになるでしょうが、必ず遺言執行者を選任しておくことが必要になります。

また、死後ということになると、被相続人本人は証言できませんので、「虐待、侮辱、著しい非行」などについての証拠をきちんと残しておく必要があるでしょう。

このような推定相続人の廃除事由となる「虐待、侮辱、著しい非行」などの事由まではないような場合には、最低限の遺留分はその者に相続させることにはなるでしょう。
その場合でも、死後、他の相続人とその相続人との間でトラブルになることをできるだけ避けるため、当該相続人の遺留分に配慮した遺言書をきちんと作っておく方がよいでしょう。

このように、特定の推定相続人には相続させたくないという場合には、一度弁護士等の専門家にご相談いただき、亡くなった際にご自身の遺志を最大限実現できるよう準備いただくことをおすすめします。

※なお、遺留分に関しては、相続法改正によりこれまで「遺留分減殺請求権」と呼んでいたものが「遺留分侵害額請求権」に改められており、2019年7月1日から施行されます。

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愛知市民法律事務所 弁護士 榊 原 真 実
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