病院・介護施設関係者の方へ

病院・介護事故に関する裁判例

リハビリ運動中の骨折につき介護施設側の責任を否定した例    (名古屋高裁平成28年8月4日判決 判例時報2314号64頁)

(事案)
 介護施設利用者(原告・X)は、両下肢機能全廃による一級身体障害者・知的障害の程度1度・ADL全介護の状態であった。
 Xの姉らは、もともと自宅において、四肢の拘縮予防のためのリハビリ運動をXにさせていたが、平成24年1月からは、被告介護施設(Y)の施設において実施することになった。
 Yの看護師らは、平成24年2月、Xの姉らの教示により、Xに対しリハビリ運動をさせたところ、Xの左足を伸ばす運動をさせた際、Xに左大腿骨頸部の骨折が発生した。
 Xは、この骨折は、看護師がリハビリ運動の方法を誤ったことにより発生したと主張し、Yに対し、不法行為又は債務不履行により損害賠償を請求した。
 第1審(名古屋地裁平成28年3月4日判決)はXの請求を棄却したため、Xが控訴した。

(判決の結論)
 Xの請求を棄却する(Yの責任認めず)

(判決の理由)
 Xに骨折が発生したのは、Xの骨密度が極めて低い状態にあったことが要因となっていたと解されるところ、Xの姉らは、Yに対し、そのことを伝えておらず、これまでXの姉らが自宅において実施してきたリハビリ運動をYにおいて実施することを依頼したものである。
 依頼を受けた側においては、これまで特にリハビリの専門家ではない家族が実施してきて特段の問題が発生していない手法をそのまま実施するということからすれば、当該リハビリ運動によって控訴人に骨折が発生するなど危険性が高いものであるとは考えないのが通常であろう。
 YがXに対するリハビリ運動を開始するに際して医師等の専門家の意見を聴取することなく、Xに対するリハビリ運動を開始する旨の判断をしたことについて、Xに対する配慮を欠く不法行為上あるいは契約上の注意義務違反があったとは認められない。

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