内縁関係の相続
内縁関係の相続についてのご相談
(ご相談)
「私(73歳男性)は、内縁の妻(64歳)がいます。
籍は入れていませんが、20年間、夫婦として生活しています。
この度、私に病気が見つかったため、私が亡くなった後のことを考えるようになりました。
私は今のところ遺言を書いていませんが、私が亡くなった場合、内縁の妻に私の遺産を相続させることはできますか。
もしできない場合は、今からどんなことをしておけばいいでしょうか。
なお、私には子はおらず、兄と弟が一人ずついます。」
(回答)
〇「内縁」とは
「内縁(の夫・妻)」とは、婚姻届を提出していないために法律上は夫婦ではないものの、一緒に協力しながら夫婦として生活しているなど、事実上の夫婦関係にある夫・妻のことをさします。
〇婚姻届を提出した法律上の夫婦の場合
本件において、もし仮に夫婦が内縁ではなく法律上の夫婦である場合には、民法上の規定に従って相続人が決められます(「法定相続」)。
民法では、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。」と定められており、法律上の妻は常に相続人となることになります(民法890条)。
本ケースのように、子がおらず、兄弟がいる場合には、兄弟も法定相続人となります。
遺言書がない場合には、民法で規定された「法定相続分」にしたがって、遺産が分配されることになります。
法定相続分は、この場合だと、妻が4分の3、兄が8分の1、弟が8分の1となります。
このように、婚姻届を提出した法律上の妻であれば、遺言書を書かなくとも、民法の規定により4分の3を相続することができるということになります。
〇内縁の妻の場合。
以上は、内縁関係ではなく法律上の妻の場合でしたが、これに対し、婚姻届を提出していない内縁の妻の場合、民法の相続関係の規定の適用はありません。
すなわち、内縁の妻は、法律上の規定により相続をするということができません。
そのため、遺言書がない場合は、相談者の相続人は兄と弟だけということになり、「内縁の妻は遺産を相続できない」という結論になってしまいます。
事実上夫婦として生活を送っており、実態は法律上の夫婦と変わらなくとも、相続の場面では法律上の夫婦と大きな差が生じてしまうのです。
このような事態を回避するために、しておくべきこととは。
「内縁の妻に遺産を残したい」という場合には、遺言書を書いておく必要があります。
「内縁の妻に〇〇を相続させる」「内縁の妻に全て相続させる」旨を明記した遺言書があれば、内縁の妻にも遺産を相続させることができます。
遺言書には、自分で自筆で書く遺言書(自筆証書遺言)と公証役場で正式に作成してもらう「公正証書遺言」がありますが、のちのトラブルを防ぐためにも、公正証書遺言を作成した方がよいでしょう。