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悪質ホームページリース被害の手口 【2】~「上司に連絡します」にご用心!!~

悪質ホームページリース被害の手口 【2】~「上司に連絡します」にご用心!!~

最近よくご相談・ご依頼を受ける悪質ホームページリース業者について書いています。

※事案は、複数の被害事例を基に再構成してあり、A子さん等の登場人物は架空の人物です。

悪質ホームページリース被害【1】~開業直後にご用心!!~からの続きです。

さて、(とりあえず話を聞くだけなら・・)と思い、しつこい勧誘電話に対し仕方なくY社の営業社員の来訪を許したA子さん。

2月26日、約束どおり14時にY社の営業社員B山がお店(「A店」)にやってきました。

Y社のB山は、A子さんに対し、

「お店の集客って何か考えていらっしゃいます?

やはり、インターネット検索の結果、上位表示されるようにするのが集客のための一番の方法です。

そのためには、SEO対策が必要です。

わが社の方でホームページを作成させていただき、SEO対策をしっかりさせていただきますから、すぐにネット検索上位に表示されるようになりますよ。

A子さんにやっていただくことは、週に1回クリックするだけです。

そうすれば各段に来客数が増えますから、売り上げがアップしますよ。

先日契約したお客様も、始めて1か月でネット上位表示されるようになって、売り上げが一気に増えたそうです。

代金は、月々5万円の60ヶ月払いです。

売り上げが月々これだけ増えると考えれば、月々の支払いは余裕でカバーできますよ。」

などと一気に勧誘文句を並び立てます。

A子さんは「まだ売り上げもあまりないし、そんなに月々払えないので、結構です。」などと断っていました。

お店には何度か来客がありましたが、B山はなかなか帰ろうとしません。

A子さんの来客対応が終わるとB山はさらに勧誘を続けます。

B山は、A子さんの優しい性格を見抜いてか、そのうち

「お願いします。契約していただけないと今日は会社に帰れません。」

などと、情に訴える方法に出始めます。

それでもA子さんが渋っていると、B山は、

「今回、うちの社は新たにこちらの地域への支店進出を考えています。

A子さんはこちらの地域では初めてのお客様として特別に『モニター価格』ということで、割引させていただくことができるかもしれません。」

「モニター価格にさせていただくには、上司の許可が必要なので、一度上司に連絡してみます!」

と言って、B山はおもむろに携帯電話を取り出し、A子さんの目の前で「上司」に電話し始めます。

B山は、電話で、電話の相手の「上司」に対し、「A店さんの件ですが、何とかモニター価格でお願いします。」とお願いしている様子です。

B山は、さらに、

「すみません、すみません。」と頭を下げ、

「そこを何とかお願いします!」

「本日だけ、A店さんだけということで、何とかモニター価格でお願いします!!」

などと必死に頼んでいる様子です。

B山は10分くらい「上司」とやり取りし、最終的に「わかりました、モニター価格ということで月々29,000円でということで。A店さんに話してみます。」と言って、電話を切りました。

B山はA子さんに対し、

「何とか上司の許可が取れました!!

モニター価格ということで特別に、月々29,000円でやらせていただきます!!」

と言います。

A子さんはそれでも「やっぱり一度考えてからでないと・・・」と言いましたが、B山はさらに、

「上司に、今日の契約でということで特別に許可をもらったので、

モニター価格でやらせていただけるのは今日中の契約だけなんです!」

と畳みかけました。

A子さんが時計を見ると時刻はもう18時。

B山が14時に来訪してから4時間も経っています。

お店は閉店時間ですし、子どもを保育園にお迎えに行く時間が迫ってきています。

A子さんは焦ってきました。

A子さんは長時間の勧誘に疲れ果てていましたし、B山に帰ってもらうには契約するしかなさそうだと思いました。

それにA子さんは、

(B山さんが目の前で上司に連絡して何とか「モニター価格」ということで割引の約束を上司に取り付けてくれたんだし・・

絶対に上位表示されるようになるのなら客も増えて売り上げも増えるだろうから、月29,000円の支払いなら何とかなるかもしれない。

「モニター価格」に値下げしてもらえるのは本日中だけなら、今日契約するしかないのかもしれない・・)

と思い、最終的には「じゃあわかりました・・・売り上げが増えるなら・・。」とB山に告げ、契約することになりました。

(→続きは次回「悪質ホームページリース被害の手口【3】~契約書類への記入編~へ)

さて、上記のような勧誘のやり取りは、悪質ホームページ業者によく見られる手口のようです。

このように、

「目の前で『上司』に連絡して、やっとのことでモニター価格(割引価格)の許可をもらう」

「本日中の契約という限定で割引価格を上司に許可してもらったので、割引価格で契約できるのは今日だけ、と強調する」

といった勧誘方法を複数のご相談者が経験しています。

多くの被害者が経験していることからすると、この「『上司』との電話のやり取り」というのは、元々Y社の勧誘手口に組み込まれていると思われます。

「『上司』に連絡して、頭を下げて、本日中の契約というのを条件に、何とか割引価格を取り付けてくれた」

という場面を目の前で見せられれば、優しい性格のA子さんとしては非常に断りづらくなります(特に優しい性格でなくても、断りづらくなるという人が多いでしょう。)。

それに、目の前で上司に割引を許可してもらったことにより、「モニター価格で契約できるのは本日中だけ」というB山の説明にも説得力が増します。

この「上司にその場で電話」という手口は、そのような被害者の心理を利用していると思われます。

元々本当に月々5万円×60ヶ月=300万円の価値があるソフトウェアであれば、そんな簡単に値下げすることはないでしょうが、後から説明するように、ほとんど価値のないソフトウェアです。

Y社としては、高い値で契約できるに越したことはないでしょうが、300万円で契約できなくても、200万円や100万円ででも契約してもらえれば大きな利益を得ることができます。

なので、目の前でこのようなやり取りを見せて、値引き(モニター価格)が「A店だけ、今日だけ」の特別なことのように思わせて、「値引きした」価格で契約をするよう事を運ぶのだと思われます。

「今日中」と限定されることにより、最初は(今日は契約せずにとりあえず調べてから契約しよう)と思っていたA子さんも、B山の提示する価格が適正な価格なのか検討する余裕も与えられないまま、契約させられてしまうのです。

目の前でこのような「寸劇」を見せられても、「でもやっぱり今日はいいです。一度考えます」と断って、勧誘業者には帰ってもらい、本当に必要な契約なのか、適正な価格なのかを、自分でよく調べてみる必要があります。

逆に、「本日中だけです!」と強調する業者ほど怪しい、という目をもって警戒していただければと思います。

愛知市民法律事務所 弁護士 榊原真実

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