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民事執行法等の改正〜養育費の取り立てが容易に〜

2019年5月10日、養育費の取り立てを容易にする重要な改正法が国会で成立しました。(民事執行法等の改正)

★ポイント

民事執行法の財産開示手続が改正され、「第三者からの情報取得手続」が新たに設けられました。

これにより、養育費を支払う義務者(債務者)の勤務先、預金口座の情報等を裁判所から役所等の第三者に照会できるようになりました!

★勤務先の照会

これまでは、債務者がそれまでの勤務先をやめてしまい、新たな勤務先が不明な場合、給与差押えができませんでした。

今回の改正により、裁判所から市町村や年金事務所に債務者の勤務先を照会し、回答させられるようになります。

そのため、債務者の給与差押えが容易になります。

★銀行口座

これまでは、債務者の口座が、どの銀行のどの支店にあるか分からなければ、銀行口座の差押えができませんでした。

今回の改正により、裁判所が銀行の本店に情報提供を命じることで、どの支店に口座があるか回答してもらえるようになりました。

銀行が情報提供したという通知は債務者にも伝えられますが、その前に債権者に情報提供されるので、債務者が口座内のお金を下ろしてしまう前に迅速に口座差押えをすることにより、口座内の預金から債権回収することが期待できます。

★株式や社債

裁判所から証券保管振替機構に照会することで、債務者がどの証券会社に上場株式や社債を保管しているか確認できるようになります。

★不動産(土地、建物)

債務者の所有する土地や建物等の不動産について、裁判所から登記所に照会することができるようになりました。

★公正証書で養育費の取り決めをした場合でも、財産開示手続の利用が可能に

これまでは財産開示手続の利用は確定判決を受けた場合などに限られ、公正証書による取り決めの場合は財産開示手続は利用できませんでした。

今後は公正証書による取り決めの場合であっても、上記の財産開示手続きさが利用できるようになります。

★罰則の強化

債務者は、財産開示期日に裁判所に出頭し、自己の財産
に関する陳述をしなくてはなりません。

しかしこれまではこれに債務者が応じない場合の制裁は、30万円以下の過料という行政罰のみであったため、財産開示手続の実効性が低いと指摘されていました。

今回、債務者への制裁は、「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」と強化されました。

罰金は刑事罰ですから、行政罰よりも強い制裁で、これを科されると「前科」になります。

また、懲役刑が追加されました。

罰金を支払わない場合には、労役場留置も可能です。

これらの罰則強化により、財産開示手続がより実効性のあるものになることが期待されます。

★いつから施行されるの?

公布から一年以内に施行されることになっているので、2020年4月に施行される可能性があります。

★すでに取り決めた養育費は対象?

施行日前に取り決めた養育費に関しても対象となります。

★すでに未払いになっている養育費は対象?

施行日前に滞納になり溜まった養育費についても対象となります。

★これらの改正により、養育費の支払いが飛躍的に進むことを期待したいと思います。

愛知市民法律事務所

弁護士 榊原真実

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