遺産分割で相続税申告書の申告額を参考とする場合の注意点
遺産分割の場面で不動産を評価する際には、公示価格、固定資産税評価額、路線価(相続税評価額)などが参考とされます(この点についての記事はこちら)。
このうち、路線価(相続税評価額)は、相続税の申告時にも基準とされる信頼性の高い基準額であることから、よく「不動産の評価は相続税評価額でいいですね?」と相手方弁護士から言われたりします。
こちらも、相続税評価額ならいいだろうと思いOKすると、相手方弁護士から相続税申告書に記載されている申告額を基準に計算した評価額をもとに遺産分割協議案が提示されてくるかもしれません。
しかし、相続税申告書に書かれた申告額は、必ずしも相続税評価額と一致しているわけではないので、要注意です。
すなわち、相続税額を算出する際には小規模住宅、事業用宅地などについて「特例措置」が適用され、相続税額が軽減されるケースがあります。
これらのケースでは、相続税支払いのために自宅や事業用資産を売却しないで済むようにという目的から、大幅な評価減が認められています。
そのため、相続税申告額が、時価とかけ離れた非常に低い価格となっていることがあるのです。
このような場合に相続税申告額をもとに計算してしまうと、不動産が不当に低い評価となり、特に、不動産以外の財産を取得する側にとっては非常に不利益です。
このような場合には、相続税の軽減前の適正な価格に修正する必要があります。
したがって、「相続税評価額なら公正だから、相続税申告書をもとに決めましょう」と言われても、よくよく注意する必要があります。