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遺産分割における不動産の評価方法

遺産分割協議や遺産分割調停において、遺産の中に土地・建物などの不動産が含まれる場合、
その不動産の評価額をどのように決めるか、という点が極めて重要です。

遺産に不動産が含まれる場合、遺産である不動産を売却して換価した上で、手数料や税金等を引いた残りを共同相続人間で分けるという方法が取られる場合には、実際に売れた金額を元に計算すればよいので、評価の問題は生じません。

これに対し、共同相続人のうちの一人が遺産である不動産に居住しているなどの理由から、一部の共同相続人が不動産を取得し、その相続人が他の相続人に「代償金」を支払うという形で解決しようとする場合には、当該不動産をいくらと評価するかによって、支払うべき/もらうべき代償金の金額が大きく変わってきますから、極めて重要です。

また、不動産の生前贈与を受けたことを特別受益として扱う場合にも、その不動産をいくらと評価するのかによって、各相続人のそれぞれの取り分が変わってきますから、評価額は極めて重要です。

不動産の評価額は、不動産を取得して他の相続人に代償金を支払う側にとっては、低く抑えたいところですし、一方、不動産をもらわない代わりに代償金を支払ってもらう側からすれば、なるべく高く評価してほしいところですから、立場の違いによって、評価額について激しい意見の対立が生じるのです。

にもかかわらず、当事者本人だけで調停に臨んだ場合などに、調停委員から「不動産の評価は固定資産税評価額を基準にするということでよろしいですね?」と聞かれ、あまり何も考えずに「はい」と答えてしまい、不利な結果となってしまった、などといったケースが散見されます。

「評価額といっても、遺産分割調停ではだいたいの評価方法が決まっているんじゃないの?」
「固定資産税評価額なら、公的な評価額だから、おおむね公平なんじゃないの?」

などと思われるかもしれませんが、不動産の評価額については、以下のように参考となる価格がいくつかあり、どれを参考にするかによっても評価額が変わってきます。

1 地価公示価格、地価調査標準価格

地価公示価格(公示価格)とは、国土交通省の土地鑑定委員会が、特定の標準地について毎年1月1日を基準日として公示する価格です。
地価調査標準価格というのは、都道府県知事が特定の基準地について毎年7月1日を基準日として公表している価格で、評価方法は公示価格と同様です。

メリットは公平性、透明性が高いという点です。

デメリットは、全ての土地について公示価格が公示されるわけではないため、地域要因や地形、権利が設定されているといった個別的要因の影響をどのように判断するか難しいという点です。

2 固定資産税評価額

市町村は、土地の個別的要因(地形、角地など)を考慮して固定資産税評価基準により不動産ごとに固定資産税評価額を定めています。

固定資産税評価額は、公示価格の70%をめどに設定されていると言われています。

したがって、固定資産税評価額を70%で割り戻せば(固定資産税評価額÷0.7)、だいたいの不動産の価格が算出できると言われています。

メリットとしては、固定資産税課税明細書において簡単に確認できる点です。

デメリットとしては、限られた時間で大量の土地を評価するという性質上、適正な時価と乖離していることがある点、原則として3年に1度しか評価替えをしないので、その時点での時価を反映していない場合がある点です。

特に、支払いを受ける側の場合、安易に固定資産税評価額でOKと合意をしてしまわないようにしなくてはなりません。

3 路線価(相続税評価額)

路線価とは、相続税を賦課するために全国共通で画一的に設定された基準に基づき算出された、道路ごとの評価額です。

路線価は、公示価格の80%を目処に設定しているとされています。

メリットとしては、路線価は、毎年評価替えされており、路線価図を見ればわかるので簡単に確認することができるという点です。

デメリットとしては、実際の市場価格とは異なる点です。

なお、相続税申告書に記載された申告額が必ずしも路線価(相続税評価額)と一致するわけではないため、相続税申告書を参考に協議をする場合には注意が必要です(詳しくはこちら)。

4 不動産業者の査定額

実際の取引事例などを参考に不動産業者が査定を行うもので、無料で簡易査定してもらうことができ、だいたいの市場価格を知るための参考にするには簡便な方法ですが、業者によって査定額に開きがあったり、考慮すべき個別的要因を見落としている場合があったりします。

また、調停に不動産業者の査定額を提出しても、重要視してもらうことは難しいかもしれません。

遺産分割調停等においては、上記のような価格を参考としながら、当事者間で合意が可能であれば合意をして評価額を決めます。

合意が困難な場合には、

5 不動産鑑定士による鑑定

が行われることもあります。

不動産鑑定士は不動産鑑定の専門家であり、その鑑定額はおおむね公正な価格であると言えますが、これも複数の不動産鑑定士が鑑定をすればそれぞれ異なる鑑定結果となることがあり、当事者がそれぞれ鑑定額を出してきて対立するということも起こります。

有料であり、鑑定には期間を要することから、あまり使われませんが、他の基準では話がつかない場合には不動産鑑定士に依頼することもあります。

不動産の評価額は、遺産分割事件において、非常に重要な論点です。
評価額について不利な合意をしてしまうと、支払う/受け取る代償金や遺産の額に大きな影響を及ぼします。

したがって、不動産の評価額をどうするかと調停委員に聞かれた場合には、即答はせずに、一度弁護士にご相談されることを強くお勧めします。

中には、不動産鑑定費用をかけてでもきちんと鑑定をすることによって、何百万円も結果が変わってくることもありますから、安易な合意は禁物です。

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