面会交流の際に監護親(母)の立ち会いを認めた裁判例【東京高決H30.11.20】
未成年者を連れて別居を開始した非監護親(父)と未成年者との面会交流について、未成年者の連れ去りその他の事情に配慮して、監護親の立会いを認めて実施するのが相当であるとした事例【東京高決H30.11.20】(判例時報2427号2020年2月1日号P23)
別居中の夫(非監護親)が、妻(監護親)に対し、面会交流の審判を申し立てた件です。
【事案】
夫Xと妻Yは2012年に婚姻し、2013年に未成年者Aをもうけ、夫婦ともにAの世話を行っていました。
しかしXは、Yと喧嘩口論になることが多く、同居することに耐えられなくなったため、Yに知らせることなく、2016年5月18日、Aを連れて別居を開始しました。
Yは同年6月15日、Aの引渡を求める審判を申立て、同年11月9日、Yの申し立てを認める審判がされ、Xの抗告も棄却されて確定し、2017年3月13日、XはYに、Aを任意で引き渡しました。
Xは同年3月18日、Yは面会交流調停の申し立てをしましたが4月に不成立になり、審判に移行しました。
【争点】
本件の争点は、面会交流の際に監護親Yの立会を認めるのが相当であるか否かという点でした。
【原審】
原審判(千葉家裁松戸支部平成30.8.22)は、XがYに任意でAを引き渡したこと等を考慮すると「現時点でXがAを連れ去る具体的なおそれがあるとは認められない」として、XのAとの面会交流を認めました(Yの立ち会いについては認めず)。
【抗告審】
これに対し、Yは、即時抗告をしました。
抗告審は、XがAと直接面会することは認めた上で、XがAを連れて別居した事実があったことから、今後の面会交流において連れ去りがあるのではないかというYの懸念に配慮して、面会交流へのYの立ち会いを認めました。
【コメント】
面会交流においては、「子の福祉」が最も最優先されるべきですが、近年、子の個々の事情への配慮が欠けたまま、面会交流ありきで調停等においても面会交流をすることが決まってしまうことがあります。
しかし、子を育てる監護親が連れ去りの不安を抱いたままでは、子にとって意義のある面会交流が円滑に行われないおそれがあります。
本件ではそのような点に配慮して面会交流の条件について判断した点で参考になると思います。