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夫が特有財産から不動産所得を得ている場合の婚姻費用算出方法

愛知市民法律事務所 弁護士 榊原真実

夫が例えば親から相続した不動産や、婚姻前に購入した(代金支払い済み)不動産を所有している場合、そういった不動産は、夫の「特有財産」とされ、離婚の際の財産分与に当たっては分与の対象となりません。

では、夫がそれら固有財産である不動産から不動産所得を得ている場合、この不動産所得は、婚姻費用を計算する際に基礎とすべき夫の収入となるでしょうか。

この点については、「特有財産からの収入であっても、婚姻費用分担額の基礎とすべき収入となる」ということになります。

この点に関する裁判例として、大阪高裁平成30年7月12日決定(婚姻費用分担審判に対する抗告事件、判例時報2407号27ページ)があります。

夫が、経営する会社からの給与収入、配当所得、公的年金のほか、不動産所得を得ていたケースにおいて、妻が夫に婚姻費用請求をし、不動産所得に関しても夫の収入に含めるかどうか争いになりました。

夫は、「特有財産であるから、収入に含めるべきでない」と主張しました。

これに対し大阪高裁は、

「相手方(夫)の特有財産からの収入であっても、これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば、婚姻費用分担額の算定に当たって基礎とすべき収入とみるべきである。」

とし、別居前に夫が妻に渡していた生活費の額(15万円)からすれば、夫の特有財産からの不動産所得は、夫婦の婚姻中の生活費の原資となっていたとして、夫の特有財産からの不動産所得も夫の収入として扱って婚姻費用の額を計算しました。

婚姻費用の複雑な請求については、弁護士にご相談下さい。

愛知市民法律事務所 弁護士 榊原真実

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